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[更新]中央救助1(救工-3号)(追記) [宇都宮消防更新車両情報]

こん○○は!

今日はもう待ちに待った、我らが「救工-3号」の更新大特集です。

 事前に情報は散見されていたところですが、やはり完成車としての実車を目にしたときは感動を覚えました。

 これまでの宇都宮消防救助工作車といえば、日野レンジャー高床四駆増トンシャシ(FT)をベースとした鹿沼市(栃木県)の救助工作車メーカーのパイオニア・テイセン製で、そのテイセンにおいて数年前から確立され始まったモデルラインナップで言うところの「LL型」に相当するものでした。

 現在では、日野レンジャーの高床四駆シャシが廃止されてしまったため、今回の新・中央救助1もどうなるものかと思っていました。
 
 現在の宇都宮の救工の仕様を遡ると、平成8年に更新された先々代の車両にその端緒を見ることができます。
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先々代の中央救助1(のちに配転され西救助1

 平成8年という時期を見れば、関西地方を中心に大きな被害を受けた「阪神・淡路大震災」(兵庫県南部地震(平成7年1月17日))が大きく影響していることはいうまでもありません。被災地までの道路状況に車両部隊進出が阻まれ、災害対応車両の「走破性」が問われることとなりました。
 この結果全国的にほぼ同時期に高床四駆シャシをベースとした救助工作車(と支援車)の配備が一気に進みました。
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阪神淡路大震災を受けて旧・中央救助1とほぼ同時に新規配備された初代・支援車中央支援1(のちに配転され東支援1

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緊急消防援助隊・栃木県隊として広域派遣される旧・中央救助1


 しかし時を経て現在では全国的に大規模震災時などにおける拠点進出をサポートする体制の確立、消防の道路啓開重機等の配備が進み、またさらに平時の市街地運用を重視する傾向が強まったことから、次第に敬遠されるようになるなどして、市場規模も縮小し、一部からは強力な要望がありながらも、ベースシャシ(日野レンジャー・FT)自体が販売終了となりました。(※いすゞフォワードではまだあるようです。)
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いすゞフォワード高床シャシベースの小山市消防本部・小山市消防署の小山救助

 ちなみに宇都宮消防ではシャシさえあればこれまでと同じ仕様で継続したのかなと思われます。「救工はこのカタチでこのサイズ!」というのが常識化してるところがあったかなと思います。車体サイズや取り回しに関しても、機関員の高いスキルによってデメリットをデメリットたらしめない領域に達していました。


 こうした車両に取って代わって現在の主流となったのは「バス型救助工作車」です。
 一般的に通常のダブルキャブよりもより広く架装自由度の高い、艤装メーカーによって作られた後席の乗員スペース部分、いわゆるバス型のキャブ内は、乗員の現場までの装備着装や資機材選定を可能としたり、仕様によっては使用頻度の高い主要装備をキャブ内に装備し、現着後のすぐ活動展開できるなど利便性と発展性に富んでいるのが特徴です。(※いわゆるキャブバス型)また、水難救助や特災事案での着替えスペースや広域派遣時の居住空間としても活用できるという点もメリットとしてあげられます。これにより通常管内から広域派遣まで広くカバーできるといわれています。

(参考)
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水難・特災事案対応もお手のもの、“完全バス型”の代表格、横浜市消防局・特別高度救助部隊「スーパーレンジャー」の旧・機動第2救助救助工作車

 加えて誰もがスマホ片手にカメラマンになれる現在、現場で活動する隊員にとってそれらは場合によっては公安職のプロフェッショナルである以前に、一人間として当然ストレスやプレッシャーとなり得ます。そうした“視線”から隊員を守る必要性も出てきました。(こうした点を踏まえれば、あくまで私見ですが、そのカメラを執拗に向ける存在である我々ファン・愛好家・マニアといった自分も今一度考える必要があるなと思いました。)
 (理由は他にも多様にあるかと思いますが、消防の現場の方や開発の最前線に立たれた方のお話しをお伺いする限り、主立って上のようなメリットが今のこのご時世に合致したのではないかと愚考します。)

 このバス型救助工作車に関して、特に地元でもおなじみのテイセンの救助工作車の「HX型」が誕生して以来、これが非常に大ヒットし、今や全国的にバス型救工自体が一般的な存在になりました。

 栃木県内では栃木市消防本部・栃木消防署栃木救助が更新配備されたのを皮切りに、
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今年度芳賀地区広域行政事務組合消防本部・真岡消防署真岡救助もHXで更新され、続々と数を増やしています。


そしてそして、遂に我が地元宇都宮にも満を持して配備されることになりました・・・



中央救助1(救工-3号)
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車種:救助工作車Ⅲ型
運用:宇都宮市中央消防署・高度救助隊「スーパーレスキューUTSUNOMIYA」
受注:帝商
艤装:テイセン
モデル:「HX」
シャシ:日野 レンジャー 11.99t(増トン仕様)
変速機:マニュアル
駆動:四輪駆動
乗車人数:前2名・後3名(隊長席・後席:呼吸器内臓一体型シート ベルリング製「BLシート」+同「スマートドック」)

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 見た目に関してはあらためていうまでもありませんが、見た目は大切です。もうとてもとてもとても素晴らしいです。カッコいいです。

 車体の文字デザインは使用フォントをあまり散らさずに一般的な所属表記や整理番号などを丸ゴシックで、運用部隊である高度救助隊の愛称を前面に「SUPER RESCUE」「SR」を角ばったデザインフォントで配し、スッキリとしながらもしっかりとしたインパクトを打ち出しています。また、デザインマーキングは宇都宮の「U」を基調としたものから、雷の多いことから称される「雷都・宇都宮」から着想を得て、稲光をモチーフのデザインとして、さらに活動の迅速性・現場へ向かう素早さをイメージしているそうです。

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 HXでもキャブルーフ部の主警光灯にあたる部分は、ビルトインタイプと連発型(いずれも通称)とありますが、個人的には連発型激推しだったので嬉しい限りです。しかもウィレンです。フロントにM7、サイドはM6、後面はM9(壁面取付作業灯も同様)、とまた隙のない理想的な選定と配置です。

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 バンパー張出部の裏側にモーターサイレンが取り付いており、モーターサイレンの中でも最も音圧の強力な大阪サイレン製「7N型」(防雪カバー付)を採用しています。
 発光時の最高輝度と瞬発力のあるウィレン製灯火類と7型のモーターサイレンによって、視覚的にも聴覚的にも強力な周囲警告性を備えており、緊急走行時の安全性向上にも余念がありません。

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 あと後部灯がLEDのコンビネーションタイプのものになっている点も素晴らしい。普通の電球式に比べてLED式はブレーキ信号入力→灯火点灯までのタイムラグが圧倒的に短いですから(といってもコンマ数秒の違い・・・されど大きい違い)、走行中の後続車への注意喚起性能を向上できます。

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 キャブ内座席シートは呼吸器内臓一体型シートとして、ベルリング製の「BLシート」を採用。呼吸器ブラケットは専用設計されたBLシートに合わせ、同じくベルリング製の「スマートドック」が取り付いています。こちらもたしか市内初採用。
 未使用時は写真のように座面がハネ上げ式になっていることから、キャブ後席部の床面積をすることが可能となり、車内活動性が向上します。

 HXですのでシャシは日野レンジャーで車格的にワイドキャブ増トン車となります。
 全国的には一般的な中型低床・標準幅シャシの車両からHXに更新したところでは「大型化」してしまって慣れるまでは市街地での運用で戸惑った・・・などという話も聞かれました。
 しかし宇都宮では元が高床8トンベースからの更新となりますので、結果的には“小型軽量化”されており、意外なメリットだったとの評でした。
 変速機はオートマチックが増えつつあるトレンドに反し、マニュアル。しかし運用する高度救助隊は昔から運転にも一家言ある方が多いですから(※個人的な印象です)パワーの取出しが自在なマニュアルが選定されたのかなと思います。

 ウインチにロッツラー、クレーンにユニック、照明塔に湘南と、テイセン救工ではおなじみの組み合わせですが、ウインチの能力向上、クレーンブームの多段化など随所に仕様向上が見られます。照明塔はポール式を廃してナイトスキャンを採用する流れも一部では見られますが、塔の最大高さを稼げる等のメリットで根強い人気のある湘南製のポール式の照明塔が採用されています。
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 クレーンのアウトリガー用敷板が石橋地区消防組合・石橋消防署石橋梯子のようなマグネット式になっており、事前にアウトリガーに取り付けられることで

アウトリガー引き出し→ 敷板位置調整 →ジャッキテンション

の“間のひと工程”を省略できるメリットがあります。


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 シャッターに救工では初のバーシャッター(大阪サイレン製SH-35B)を採用。前年度タンクポンプともすでに新型のSH-33Bを採用済みだったので、35Bで来るとは意外でした。

 救助工作車の主要ツールといえば油圧救助器具ですが、従来はこれら油圧のカッター・スプレッダー・ラムシリンダーとこれらを駆動させるためのエンジンユニットホースリールが資機材庫の一番“おいしいところ”・・・最も取出しがしやすい大きなスペースを占領していましたが、今回からバッテリー式の油圧救助器具としたことで、資機材収納庫の大幅な省スペース化を図っています。またシャシが低床化されていることもあって、スカートボックスにこだわることなく資機材配置が出来ているように見受けられました。(ちなみに西救助1でもすでにバッテリー式油圧救助器具(ルーカス製eドローリックシリーズ)を採用していましたが、ホース接続タイプが主流で、バッテリー式はサブ的な扱いだったかと記憶しています。)
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 今や世界的なトレンドを見ても、バッテリー式のコードレスツールが一般的であり、(破壊能力的にも全く遜色ないことからか)今回からバッテリー式がメインとなっています。そして今回この油圧救助器具が、これまでのルーカスから変更となり、ホルマトロ製「グリーンライン EVO 3」シリーズが採用となりました。
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 余談ですが・・・ 『テイセン=ルーカス』というイメージが強いですが、テイセンでは車両製作担当者向けの展示イベント「TRES」でも、油圧救助器具はルーカス以外にもホルマトロなど、ウインチはロッツラーだけでなく大橋機産も、クレーンはユニック以外にもタダノも・・・と、“固定的なイメージ”にとらわれず自由に選択できることをアピールしています。



 救助工作車は数え切れないツールが詰まった宝箱のようです。資機材や装備はまだまだありますが、ひとまずここらへんで初回の簡易的な紹介は〆ます。また追記か詳報記事で追って深堀りしていけたらと思います。


 最後に、平成17年度から令和3年の3月まで、宇都宮市内のみならず全国各地で救助活動を行ってきた、宇都宮消防の顔・栃木県隊救助の顔である先代・救工-3号、おつかれさまでした。自分の消防好きの人生の中で最も多く目にした車両でした。引退後は栃木県内の消防隊員の育成のためにはたらくそうです。
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 車両は運用する隊員=人なくして活躍できません。先代・救工-3号と歴代この車両を運用されてきた中央救助隊の隊員の皆さんへの最大限のリスペクトを込めて、結びといたします。



本稿における内容はあくまですべて当方の趣味の範疇におけるあくまで個人的な見解であり、公的な認識・意図・目的とは大きく異なる場合があります。本記事に関する当該消防様へのお問い合わせ等はご遠慮願います。
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